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腸内細菌

 腸内細菌は、いろいろなビタミン類(葉酸・ナイアシン・ビタミンB6・ビタミンB12・ビタミンCなど)だけでなく、「脳内幸せ物質」であるセロトニンやドーパミンの前駆物質を作っていることが分かってきました。また、体の中の免疫細胞の70%が腸に存在し、腸内細菌の出すシグナルに応じて腸管壁にいる免疫細胞が働き出し免疫力を高めています。人の腸管内には約100兆個、菌種にして1000種類を超える菌が細菌叢を形成し、腸内フローラと呼ばれています。また、人の糞便中には食物残渣より腸内細菌が多く含まれていますので、腸内細菌が多いと便の量も多いということになります。その他、便の色(黄色に近い方が良い)・形(バナナ状が良い)・匂い(悪臭はダメ)も良い便かどうか、ひいては良い腸内環境かどうかの指標になります。

菌は門→網→目→科→属→種として分類されます。門の分類ではバクテロイデーテス門・ファーミキューテス門・プロテオバクテリア門・アクチノバクテリア門の4つがヒトの腸内フローラのほとんどをしめますが、その構成に個人差が大きく多様性に富み、年齢・人種・食習慣等によっても変化します。年齢とともにアクチノバクテリア門が減り、ファーミキューテス門・プロテオバクテリア門・バクテロイデーテス門が増える傾向にあります。

腸内細菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌といった分け方もされています。善玉菌を増やし悪玉菌を減らすことが健康にとって大事です。特に年齢とともに減っていくビフィズス菌を多く保つことが、若さを保つために大切です。・ビフィズス菌・乳酸菌やその菌体成分は、腸管免疫を活性化させ、感染症の防御に貢献するだけでなく、ガン細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞を活性化させたり、アレルギー反応を抑制したりすることにも効力を発揮すると言われています。また、糖から酪酸を作る酪酸菌、大豆イソフラボンからエストロゲン様作用をするエクオールを作るエクオール産生菌などの存在も指摘されています。肥満には「ファーミキューテス門のデブ菌」や「バクテロイデーテス門のやせ菌」などが関係するとも言われています。ウェルシュ菌のような悪玉菌は未消化のタンパク質を腐敗させて毒素を発生させます。クロストリジウムのような胆汁酸を発がん物質に変えてしまうものもあります。動物性タンパク質・脂肪を取り過ぎると、便が黒く匂いも強くなるのは悪玉菌が増えたためです。ただ、悪玉菌も悪さをするばかりではないので、善玉菌とのバランスが大切だと言われています。

腸内細菌は菌の数が多く、種類も多いのが良いとされています。腸内細菌を育てるには食事・ウオーキングなどの運動・ストレスの軽減です。腸内細菌を増やす食品は、主に野菜・海藻・キノコなどに含まれる食物繊維や乳酸飲料・ヨーグル・納豆・漬物などの発酵食品などです。発酵食品に含まれる生きた細菌や酵母などのプロバイオッテクスを取ることは大切ですが、生きた細菌がそのまま腸内に定着すると言うより、プロバイオテックスに含まれる菌体成分が、腸内のビフィズス菌等の発育を助けていると考えられています。また食物繊維の他、オリゴ糖もプレバイオテックスとしてビフィズス菌を育てます。オリゴ糖はビフィズス菌のえさになりますが、悪玉菌はほとんど利用しないという性質があります。

 腸内細菌は人類が出現したときから共存して暮らしています。腸内細菌を大切にして、喜ぶことをしておけば、腸内細菌も私たちの健康のために働いてくれます。

*当院ではマイキンソープロによる腸内細菌叢(腸内フローラ)検査(どのような腸内細菌がどれくらいいるかという検査)を行っております。検査料金は自費で2万円です。