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油脂と健康

  • 私たちが食用にしている油は、色々な種類があり、どれが健康にいいのかという情報も色々と変化してきています。脂肪は、脂肪酸から成り立っていますが、脂肪酸には、分子的に二重結合がない飽和脂肪酸、二重結合を含む不飽和脂肪酸があります。飽和脂肪酸は、動物性脂肪や、ココナッツオイルなどに多く含まれ、不飽和脂肪酸は、植物性オイルに多く含まれます。植物油に多いリノール酸は、体内でガンマリノレン酸からアラキドン酸やジホモガンマリノレン酸になると言われていますが、この反応にはかなり障害もあり、作られにくいという説もあります。αリノレン酸(シソ油などに含まれる)は体内でエイコサペンタエン酸になります。アラキドン酸はプロスタグランディン2となり、炎症メディエーターを産生します。牛乳やバターに含まれるジホモガンマリノレン酸はプロスタグランディン1となります。魚油に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)はプロスタグランディン3の原料になります。また、炭素が8~10個つながった中鎖脂肪酸と、それ以上の長鎖脂肪酸という分け方もあり、吸収・消化・肝臓への移行などに違いがあります。中鎖脂肪酸は、肝臓に直行し、そのため健やかに燃焼して、身体につきにくいと言われています。また、ココナッツオイルなどの中鎖脂肪酸は肝臓でケトン体に変化し、これが脳で糖質に代わる代用ネルギー源として利用でき、認知機能に良い影響を与えるとの報告もあります。
  • 血液中の脂肪成分は、①単独で存在(遊離脂肪酸)②グリセロールに3個結合した中性脂肪③リン酸を含むリン脂質④コレステロールと結合したエステル型コレステロールとして存在します。中性脂肪や遊離脂肪酸は主にエネルギー源として活用され、リン脂質・コレステロールは細胞膜やホルモンの生成に不可欠な成分です。コレステロールが重要な材料となって、副腎皮質ホルモン・男性ホルモン・女性ホルモン・ビタミンD・胆汁酸・スクワラン等々が作られます。また、細胞膜はリン脂質でできています。リン脂質とは、グリセロールにリン酸と不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸が結合したものですが、プロスタグランディンなどを作るとき、材料となる脂肪酸は細胞膜から切り出されます。血液中のコレステロールや中性脂肪が増えすぎた状態が高脂血症で、身体に弊害をもたらすことがありますが、逆にコレステロールが少なすぎても、悪影響があります。
  • 動脈硬化を予防するために、動物性脂肪とコレステロールの摂取を抑え、植物油をとるようにとの指導が長い間なされてきましたが、最近は、食物のコレステロールと動脈硬化は関係ないという説が有力になってきています。実験や研究の結果、短期的にみると高動物性脂肪食の方が血中のコレステロール値を高めるのですが、数年という長期的にみると、高植物油食の群とまったく差がみられず、むしろコレステロールを意識的に下げた群の方が死亡率が高いという結果にもなってしまいました。ただ、一部の遺伝性家族性高コレステロール血症の人にはまだはっきりした結果は出ていません。現在、コレステロール基準値の見直しが進んでいますが、280mg/dlくらいが妥当ではないかという説もあります。
  • 逆に、コレステロールを下げる高脂血症薬の中の「スタチン」の副作用も報告されてきています。スタチンは、アセチルコリンからコレステロールを作る過程の酵素の働きを阻害して、コレステロールを低下させます。そうすることにより、同じアセチルコリンから作られるコエンザイムQ10の産生も阻害してしまいます。コエンザイムQ10は、細胞の中でエネルギー産生をしているミトコンドリアの働きを助けています。

  そのため、コエンザイムQ10が少なくなると、筋肉の働きが衰えたり、糖尿病を起こしたりすることもあると報告されています。