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ビタミンD

 ビタミンDは日光に当たることで皮下で合成される。一部食品からも摂取されるが、食事だけでは十分に補うことができない。日光に当たることが少なくなってきている現代、ビタミンD欠乏・低下状態は世界的に大きな問題になってきている。また、加齢により血中ビタミンDは減少する。

ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収・利用を悪くし、骨粗鬆症の原因となることはよく知られている。ただ、ビタミンDの働きはそれだけではない。ビタミンDは、コレステロール骨格を有するステロイドで、DNAに接着し、遺伝子の発現も制御している。そのため、免疫機能の調整、ホルモンの調整、神経形成などにも深く関係していると考えられている。北欧では冬にうつ病の発生が多いが、これはビタミンD不足によるものと考えられている。また、血中のビタミン濃度が下がるほど副甲状腺ホルモン濃度が上昇することが確かめられている。その結果、骨からのカルシウム溶出が促進し、血管壁の石灰化が進行し、心疾患の悪化に関与する可能性も指摘されている。また、最近の研究ではビタミンDが神経保護に関係し、ビタミンDの濃度が低いほど認知症リスクが高くなることが示唆された報告もある。

日光暴露や食品・サプリメントから得られたビタミンDは不活性で、体内で2回水酸化を受けて活性化する。1回目は肝臓で25OHD(別名カルシジオール)となり、2回目は腎臓で1,25-ジヒドロキシビタミンDとなる。25ヒドロキシビタミンD(25OHD)濃度は、ビタミンD栄養状態の最も良い指標で、近年その測定が保険で認められた。日本内分泌・日本骨代謝学会より発表された判断基準では、30ng/mLで充足、20~30 ng/mLで不足、20 ng/mL未満は欠乏とされている。50~60 ng/mLが最適とも言われている。(米国医学研究所の基準では、ng/mLに換算して、12 ng/mLが欠乏、12~20ng/mLが不足、20以上が正常)

対策として、戸外での運動が望ましい。半袖半ズボンで週3回20分程度のウォーキングで、十分な量のビタミンDが形成される。ただ、日焼け止めは、紫外線を遮断する。また、人工的なサンルームや窓越しの光はダメ。魚の摂取もビタミンDの補給になる。サプリメントは適正な量を摂ることが大切。ビタミンDは脂溶性なので、脂肪に蓄積される。そのため、多すぎてもいけない(多すぎると、食欲不振・体重減少・多尿・不整脈・血圧上昇・腎障害を起こす場合がある)が、脂肪分と一緒に摂取しないと吸収が良くない。最適な摂取時間帯は朝がいい。

骨粗鬆症などに用いられる医薬品の活性型ビタミンD製剤アルファカルシドールの最大一日量は40IUであるが、これはサプリメントで用いられる天然型ビタミンDと比べて代謝経路が1ステップ少なく、途中の25(OH)D3を経由せずに直接活性化型へ変化するためである。従ってアルファカルシドールを使用した場合は血中25OHD濃度に反映しないで大量投与で高カルシウム血症を引き起こす可能性がある。サプリメントである天然型ビタミンDは血中濃度を見ながら投与量を調節できるという利点があり、サプリメントの方がベターと考える。サプリメントビタミンDにはD2(植物性)とD3(動物性)の2形態があるが、ヒトにはD3が効果がある。厚生労働省によるビタミンDの目安量は、成人男女とも220IU/日で、上限量は2000IU/日である。ただ、それでも不足とする意見も多い(毎日1000~3000IU摂取が良いという先生もいる)。ビタミンDが多く含まれている食品としては、タラ肝油、メカジキ、サケ、マグロ、などがある(干しシイタケはD2であまり効果がない)。日光暴露、食品からの摂取などから過剰症を起こすことはほとんどない。米国食品栄養委員会は、サプリメントを摂る場合は、血清2 5OHD値が50~60 ng/mLを上回らないようにすべきだと指摘している。

追 1nmol/L = 0.4ng/ml    40 IU = 1㎍